二章 破滅へ向かう人類とその生存システム二章 破滅へと向かう人類とその生存システム地球は炭酸ガス等の温室効果によって金星のような灼熱の惑星になる可能性がある。 温室効果によって地球は適度な気温に保たれている。 一九世紀末スウェーデンの化学者、スバンテ・アルヘニウスと、アメリカの地質学者、T.C.チェンバレンらは独自に、大気中の二酸化炭素は、入射する太陽光線を透過させるが、地表から反射する熱線に対しては、不透明になり、熱線を透過させず再び地表へ反射させ、地表を暖める働きをしており、これを温室効果と呼び、二酸化炭素はこの地球上の気温の維持に、主要な役割を果たしていると述べている。 この地球上に生命が誕生して三十五億年経過しているがその間に、太陽の照射エネルギーは三0%増加しているが、この地球上の温度はほとんど変化していないという。 それはこの地球にすむ生命が空気中の二酸化炭素を取り込み、それを珊瑚礁あるいは石炭や石油といった炭化水素として地中深く埋蔵する事によって、空気中の二酸化炭素の量をコントロールする事によって、この地球の気候を生命に最も都合の良い気候に保って来たからだと考えられている。 もしこの地球に二酸化炭素による温室効果がなければ、この地球の平均気温は零下二0度以下になり、この地球上の大部分は氷に覆われてしまうだろうと言われている。また大気中の二酸化炭素の濃度が一%を越えてしまった時、気温は加速度的な上昇を開始し水の沸点を越えて上昇岩石をも溶かす灼熱の惑星になるまで気温の上昇は止まらず、そして最終的には、水蒸気は大気圏外に散逸し、数百気圧の炭酸ガスと、小量の窒素で構成される、金星のような惑星になると言われている。このように炭酸ガスの量はは多すぎてもまた少なすぎてもこの地球は生物が住むには不適当な環境になってしまう。 大気中の二酸化炭素の濃度は、非常に長期にわたる地質時代の期間で見ると減少してきたがほとんど安定していた。しかしイギリスの産業革命ともに地下に蓄積された、それらの炭化水素が掘りだされ、燃料として使用され、その使用量の増大ともに、大気中に排出される、二酸化炭素の量も増加してきた。 大気中の二酸化炭素の増加は、おそらくは産業革命により、石炭の大量使用が始まった一九世紀から、始まっているのだろうが、一九五0年代まではまで、それ程顕著な増加は示していなかった。しかし第二次世界対戦からまず、ヨーロッパ諸国、そして日本などの経済が戦災より復興し、そして中東諸国で大規模な油田が相次いで発見され、それに伴って先進各国がその安い石油によって空前の経済的な繁栄を開始した。しかし経済的な繁栄は石油や石炭と言った化石燃料の消費の急激な増加を促し、それに比例し大気中の二酸化炭素も急激に増加を始めたのです。 一九五八年からハワイのマウナロア観測所で空気のサンプルを定期的に収集し二酸化炭素の濃度の測定が行われて来たが、それによると五八年の三一六ppmから八三年には三四三ppmと二五年間に九%も増加を示した。このままの状態で増加が続くなら二0三0頃年までに工業化以前のレベルに比べて二倍になると予想されている。 そしてその時この地球上の平均気温は三度上昇すると予想されており、また二酸化炭素による温室効果は高緯度に向かうに従って増幅される事が知られており温帯地域では四度から六度さらに南北両極圏では九度以上昇すると予想されている。 さらに七七年米国科学アカデミーのエネルギーと気象に関する報告では、このまま化石燃料の消費が増加し続ければ、二00年以内に世界の平均気温は六度C以上も上昇し大異変が起こるかも知れないと報告している。 ソビエトの科学者チームは、気温が四度上昇するだけで北極海の氷は全て解けてしまうと発表している。南極やグリーンランドの大陸の氷河が解けてしまうには、長い年月がかかるが、北極海のような海の氷りは短い年月で解けてしまうからである。周りが大陸で囲まれた北極海の海氷が融けてしまったら、この地球全体に予測のつかない気候大変動を、引き起こすだろうと言われている。また南極でも、ロス海や・ウェッデル海のような部分の、棚氷の溶解も早いだろうが東南極大陸の氷床が崩壊しないかぎり海面の上昇にはそれほど影響はない。 しかし温室効果による気温の上昇は当然世界の気候を変えてしまうと思われ、全体としては降水量の増化が予想されるが世界の穀倉地帯が大きく変わるかもしれない。アメリカの主要な穀倉地帯の大平原は気温の上昇ともに土壌中の水分は少なくなると予想されており、中国北部やソビエトでも降水量は少なくなると予想されている。それに変わって降水量の増加が予想されるのは、オーストラリア・インドから中東にかけての全域と、北アフリカとサハラ砂漠の東半分と予想されている。 また気温の急激で大幅な上昇が予想される、高緯度の森林地帯の樹木がその急激な気象の変化に適応仕切れないだろうと考えられており、これらの地域の森林の植生に極めて悪い影響を与える事になる。シベリアやカナダのタイガの樹木が急激な気温の上昇に適応しきれず大規模に枯死するだろう。大規模な森林の枯死はそれ自身が全て炭酸ガスとなるものだし、気温の上昇とあいまって土壌中の有機物の分解速度を早める事になり、莫大な炭酸ガスの発生源となる。またそれはさらに気温の上昇を加速する事になる。 化石燃料の使用によって発生する二酸化炭素の量は年間五0億トンと推定されているが、二酸化炭素の発生源はこれだけではない。 アジアやアフリカさらに南米のアマゾンなどで食料を得るための開墾や、あるいは過剰な焼畑農業や放牧などによって森林は毎年二0万平方キロも減少しつつある。ローマ・クラブの報告によると二千七十五年にはこの地球上から森林は無くなると言っている。 これら森林を伐採された所はいずれも、その土壌やあるいはそこに生えていた植物は全てどのような形を取るにせよいずれ二酸化炭素になる。つまり森林が無くなる分二酸化炭素の発生源が増えて行くだけでなく、それが吸収するはずだった分も併せて増えて行くのです。しかも海中に、吸収される二酸化炭素の量は、従来考えられていた量より、はるかに少なく、炭素量にして、年間三0億トン程度しかない、ことが分かってきた。 そして大気中一ppm当たりの二酸化炭素の炭素量は、二十三億トンと推定されている。この地球上の植物のもつ炭素量は八000億トンそして、土壌中の有機物は一兆トン有ると推定されている。もしローマ・クラブの報告のとうりにこの地球上から森林が消滅するとすると、その土壌中の有機物と合わせて一兆五000億トンがこの大気中二酸化炭素として放出される事になる。 これは二酸化炭素の濃度にして六五0ppmに相当し、それに化石燃料による増加分と合わせると、大気中の二酸化炭素の濃度は一千三百ppmにもなると推定され、これは工業化以前の濃度の四倍以上にもなる。そしてその時の、気温を推定するなら、平均気温で十度以上上昇しているだろう。これだけ温度が、上がればこの地球は、人間の住める環境では無くなるだろう。そしてその温度の上昇はもうどの様な手段を選ぼうと、止める事が出来ない水準を突破しているだろう。 もし東南極大陸の氷床が崩壊したら東南極大陸の氷床は気温が数度上昇するだけで崩壊する可能性があり一万二千年前には海面が現在より六メートル高った時期にはこの東南極大陸の氷床は無かったのではないかと指摘する学者もいる。東南極大陸の地表面はその大部分が海面下になっておりそこに海水が流れ込めば氷床は一気に崩壊し動き出す。それによる海面の上昇は六メートルにもなり数十メートル津波をとなって世界中の海岸にある全ての都市そして日本の臨界工業地帯やヨーロッパの低地の工業地帯やインドのガンジス川流域・メコン川・中国の南部そして黄河流域の、広大なアジアの稲作地帯は壊滅に近い打撃を受け、現在の世界の秩序は崩壊し大規模な民族の大移動と戦乱が起こり、人類がこれまで経験したことの無いような大混乱に陥り、現代の政治経済秩序は崩壊し現代の物質文明は、海中に壮大な廃墟を残し滅び去るだろう。 それは日本においても例外ではなく、これまで気違いじみたテンポで近代化し工業化してきた我国は、世界的な規模で混乱と危機が表面化するその頃超高齢化社会に突入する。三人で一人の老人の面倒を見なければならない社会になるのだ。もし二千年までに新しい文明への政治、経済、社会、教育への展望を開くことが出来ないとしたら、やがて海面の上昇により海岸の都市はその機能を失い、そして外国からの資源の輸入の出来なくなる我国も、これまで長い間かかって築き上げた全ての社会基盤を失い社会は崩壊し、人々は想像を絶する大混乱のうちにこの世と別れなければならないだろう。 いま人類はあらゆる資源とエネルギーの化石燃料の無駄使いと、物質至上主義の心を失った意味の無い繁栄と、他の生命達を軽んじて来た事の償いを、一度にさせられようとしているのだ。 フロンガスは全面核戦争以上の環境破壊力を持っている。自然界に存在しない、フロンガスが最初に作られたのは一九三0年アメリカで、冷凍機の冷媒としてキネテック・ケミカル社によって開発され、それがデュポン社に引き継がれて現在に至っている。直接の毒性がなく取り扱いやすいこの物質は、現在は冷凍機や空調機に冷媒として使用されている他に、殺虫剤や様々な薬品を噴射するためのスプレーや、IC等ハイテク製品の洗浄剤や、ウレタンやスチロールの発砲剤等、あらゆる分野に使用されていてこの物質がなければ経済が成り立たないほど、私達の生活に深く浸透している。現在までに世界で生産されたフロンガスの総量は、千五百万トンにものぼっておりその内千四百万トン前後が大気中に放出されたものと推定されている。このフロンガスは化学的に安定で、自然に壊れるのに百年以上の年月がかかり、その間に生産され消費される物の大部分が大気中に放出され、それが残留しそして蓄積され続ける。そのため大気中と成層圏のフロンガス濃度は増加し続け、オゾンを破壊しオゾンの濃度は減少し続けるだろう。一般の人々にはフロンガスが核兵器による、全面核戦争並みの危険性を持つことはあまり知られていない。フロンガスは炭酸ガスの、一万倍もの温室効果を持っている事が知られており、その絶対量が少ないとしても、この地球の気象と生命に与える影響は極めて大きい。しかも成層圏のオゾン層を破壊する事が知られている。 フロンガスは大気中に放出されると、長い年月をかけて成層圏まで上昇する。そのために南極のオゾンが七十年代に入って減少を始め、そしてその後急激な減少が起り、現在では南極大陸全域にまで及ぶ地域に、成層圏にオゾンの極端な減少を示している領域、いわゆるオゾンホールが存在する事が報じられていた。この現象は戦後に世界の各地で生産が始まり、六0年代世界的に高度成長が始まり、それに伴ってフロンガスの生産も急激に増大した事の影響が、二五年程度の時間のずれを伴って、その影響が現在に現われている事を示している。また北半球でも小さなオゾンホールが、いくつも発生している可能性が指摘されている。そして現在世界中で特に北欧の北極圏に近い地域で皮膚ガンの発生率が、急上昇しており成層圏のオゾン層が少しづつ減少し、紫外線が増加しているのが関係があるとみられる。 八八年三月NASAの主催でオゾン・トレンド・パネルが開かれ、この中で最も注目されたのは、地球全体のオゾンの量が減少していると言うデーターが出された。それによると六九年から八七年迄の一七年間に北緯三0度から三九度の間で一・七%四0度から五二度の間で三%減少しているとの発表があった。 成層圏のオゾンによって、太陽の紫外線の九九%が吸収されており、オゾンがフロンガスによって破壊されるなら、全ての生命に有害な紫外線が直接地上に降り注ぎ、人間などに皮膚ガンを引き起こし、植物など全ての生命に重大な被害を与える。もし成層圏のオゾン層が十%減少したら、全ての植物の成長は止まり枯死してしまい、それによって植物に繋がる食物連鎖は崩壊し、この地上の生物の大部分は絶滅すると考えられている。 海洋でも表面近くに住む生産者であり、海洋の食物連鎖の源になっている植物プランクトンが紫外線によって死滅する事によって、それに繋がる動物プランクトンから、小魚から鯨に至までの食物連鎖が崩壊し、大規模な生物種の絶滅が起るだろう。七千万年前に起った恐竜の大絶滅は、巨大隕石の衝突が原因で大量の微粒子と水蒸気と窒素酸化物が成層圏に捲き上がり、急速に温度が低下しその後、微粒子が地上に落下した後も窒素酸化物により成層圏のオゾン大幅な減少をしていたため、強烈な紫外線が直接地上に降り注ぎ、陸上と海洋の生態系の全面的な崩壊に繋がり、極短い期間に大規模な動植物の絶滅が起ったと考えられている。 フロンは、その富みと引き替えに、自分の魂を悪魔に売った男に例えられるだろう。(このフロンの発明者はPCBも発明しておりノーベル化学賞も受賞している。この様な結果になる事は、予想出来なかったと言うだけで済まされるだろうか?)このままこの悪魔のくれた、この真に便利で使いやすい、この物質の使用を続けるなら、この文明と人類にとって取り返しのつかない事態を招くかもしれない。 私にはこの物質はこの地球に生きるに適さない生命、人間をこの地球の生態系から排除するためガイアが作り隠しておいた、落し穴だったような気がする。人間はまんまとその落し穴はまり込み抜け出る事が出来なくなった。 現在の文明はこのフロンガスを除いて考えられない程に、あらゆる所に使用されている。人類は化学的に安定で毒性もなく、真に扱いやすいこの物質の恐るべき魔性を、半世紀にも渡って見抜く事が出来なかった。人間がこの物質の本性に気が付いたとき、人間はこの物質無くして生活出来ないような、状態にまで私達の身の回りに入り込んでいたのだった。そして南極でオゾンホール作ったりしているのは、数十年も前に作られたフロンガスが成層圏にまで上昇して様々な悪さをしているのだ。 ローランド・モリナー理論によると、一個のフロン分子が成層圏の紫外線で分解し塩素を出す。この塩素はオゾンと反応して一酸化塩素(ClO)になり、これがまたオゾンと反応して塩素と二個の酸素分子に生成し、遊離した塩素は再びオゾンと反応するサイクルを繰り返すし、一瞬にして数万個のオゾン分子を分解してしまうのだ。 現在このフロンガスの生産を中止とたとしても、この状態が直ぐに改善される訳ではない。それどころか世界が一斉にフロンの生産と使用を中止したとしても、今後数十年に渡って成層圏のフロンの濃度は増加し続け、それに伴ってオゾンは減少を続けるのだ。一部の学者はもう何をしても手遅れかもしれないと、言っている事を肝に銘じておくべきだ。私は予言とか預言者の言っている事を、真に受ける者ではないが、ノストラダムスの予言を後から理由をつけて勝手に解釈するとするなら、彼の言う「空から降りてくる恐怖の大王」とは全ての生命を滅ぼす紫外線の事であると、解釈する事が出来るだろう。 世界におけるフロンガスの生産と消費が、現在の状態で推移するなら、西暦二千年には北半球の高緯度とくに北緯五十度以上では、大幅なオゾンの減少が起ると推定されている。フロンは炭酸ガスなど様々なガスによる、温室効果による被害など問題にならない程の恐ろしい悪魔の使者だったのだ。それは全面核戦争にも匹敵し人類と、この地球の生命を根絶やしにする悪魔の物質であったのだった。しかも核戦争は起っていないのに、この物質は全地球上に拡散してしまっており、何の手段を採ることも不可能なのだ。今後一世紀以上に渡って、成層圏のオゾンを破壊し続ける、フロンガスは核戦争よりも確実に人類とこの地球の生命は生死の境をさまよい歩く事になろう。 この恐怖の大王を呼び寄せるフロン問題の発端は、フランスとイギリスによって開発された、超音速旅客機コンコルドの就航によってオゾン層に、悪影響を与えるのではないかという論争がアメリカの議会で起った。その内に南極大陸でのオゾンの減少などが報告される様になりフロンガスが危険だという事が判明し、七九年になるとアメリカはスプレーにフロンを使用する事を禁止した。そして今年になってデュポン社はフロンガスの生産を二千年迄に全面的に中止すると発表したのだ。アメリカはこのような事には対応が極めて早い。この勇気ある決断は称賛に値する。それに比べ我国の政府と行政と産業界の、対応の鈍さにただあきれ腹立たしくなる。 直ちに先進国と後進国を問わず、世界の歩調を合わせた強い規制が必要だ。人類の将来を左右する重大な問題を野放しにする事は、如何なる事があろうと許される事ではない。また如何なる産業も、人間が存在していてこそ成り立つ。この地球の生命と人類が絶滅したら、どんなに高度な技術を駆使した製品でも何の意味もない。 このフロンによる環境破壊の深刻さは、他の環境破壊の問題に比べて、それに気付くのが遅くなった事と、その進行速度が早く破局を回避する、時間的なゆとりがほとんど無い事にある。フロンガスは、炭酸ガスの一万倍もの温室効果を、持っている事が知られており、しかもその吸収帯は、十ミクロン付近にあります。この付近は地球の熱を、宇宙空間に逃がす、窓の役割をしており、それを塞がれる、影響は計り知れないものがある。そのためその量は少ないとしても、この地球の気象に与える、影響は極めて大きい。 しかも成層圏の、オゾン層を破壊する事が知られており、そのために南極のオゾン層に、南極大陸全体に広がる地域のオゾン層に、穴が開いている事が報じられていた。これらのオゾン層が、フロンガスによって破壊されるなら、全ての生命に有害な、紫外線が直接地上に降り注ぎ、人間などに皮膚ガンを引き起こす。もし成層圏のオゾン層が十%減少したらこの地上の生物は全て、絶滅すると考えられている。 フロンガスの増加の影響は、それだけに止まるものでなく、成層圏のオゾンが少なくなれば、それだけでなく地表に、到達するエネルギーが増加する結果、温室効果を加速しこの地上の気温を、今まで無かった程に高くするだろう。現在の文明はこのフロンガスを除いて、考えられない程に、あらゆる所に使用されている。人類は化学的に安定で毒性もなく、真に扱いやすいこの物質の、恐るべき魔性を、半世紀にも渡って見抜く事が出来なかった。 先進国は工場や車の出す排気ガスによる酸性雨によって森林が枯死している。
先進国においても、南の国々とは違った意味の、森林破壊が起きている。大気汚染による森林への被害は近年になって、始まったわけではなく、十九世紀すでに英国やドイツでかなりの広域で森林破壊が始まっていて、その後の大気汚染の規制で一時は好転したが、それが最近になって再び起こり始めた。 |